市場規模から示唆できる戦略づくりとは
2025/04/12
市場規模から示唆できる戦略づくりとは
ビジネスにおいて新商品やサービスを開発する際、あるいは新たな市場に参入しようとする際、「市場規模」というキーワードが必ず登場します。
しかし、「市場規模が大きいから参入すべき」と単純に考えるのは早計です。市場規模は単なる数字ではなく、「戦略の方向性やリソース配分を決定づける重要な“示唆”」を持っています。
本記事では、市場規模をどう分析し、どのように戦略に活かすべきかを、わかりやすく解説していきます。
市場規模とは何か?基本の理解
市場規模の定義
市場規模とは、ある市場における「特定期間(通常1年)での総取引額(売上高)または取引数量(ユニット)を表します。たとえば「日本国内の動画配信市場:年間5,000億円」や「美容家電市場:年間1,000万台」などです。
市場規模の種類
- 全体市場(Total Market):業界全体の大きさ
- 対象市場(Serviceable Market):自社商品が対応できる市場
- 実際に狙う市場(Target Market):戦略的にフォーカスする市場
これらを分けて考えることが、戦略づくりの第一歩です。
なぜ市場規模は戦略立案に重要なのか?
リソース配分の判断基準になる
市場規模が十分に大きいかどうかは、「その市場に人・金・時間を投資する価値があるか?」を判断する材料になります。
- 市場が小さい → ニッチ市場での差別化戦略が必要
- 市場が成長中 → 投資先行型でシェア拡大を狙う
- 市場が成熟・縮小中 →選択と集中、撤退判断も視野に
収益の最大化ポイントが見える
市場規模の大きさや成長率を分析することで、「どのタイミングで参入すべきか」「利益が出やすいゾーンはどこか」が見えてきます。
競合分析やポジショニングにも活用できる
市場の規模が大きいほど、プレイヤーも多くなります。競合の動きや、ポジショニングマップを作る際にも市場規模は参考になります。
市場が大きいメリット
市場が大きいということはそれだけ事業にとっても大きなメリットがあります。
以下、解説していきます。
『成長余地(スケーラビリティ)が大きい』
大きな市場は、売上・顧客数ともにまだまだ伸ばせる余地があるということ。成功すれば規模の経済が働き、利益率を高めやすい環境が整っています。
例:国内だけでなくグローバル展開が見込める市場(例:ヘルステック、AIツール、eコマース)
『投資家・パートナーからの注目を集めやすい』
市場が大きい分、将来性がある事業領域と見なされやすく、ベンチャー企業やスタートアップの場合は特に、出資を受けやすくなります。投資家の多くは「TAM(Total Addressable Market)」が大きいかどうかを重視します。
『顧客ニーズが多様=差別化・ポジショニングが可能』
市場が大きければ、その中のセグメント(年齢、性別、ライフスタイルなど)も多様です。そのため、自社の強みに合わせてニッチを狙うことも可能です。
例:同じ美容業界でも「40代向けオーガニック志向」などで差別化できる。
『長期的に安定した事業展開ができる』
市場が大きい=一時的なトレンドではない可能性が高く、安定的な需要とリピート性のある市場であることが多いです。
例:教育、医療、食品などは市場が大きく、長期的に需要が見込まれる分野。
『価格競争に頼らずブランド戦略が取りやすい』
顧客が多く、セグメントが分かれているため、「安さ」だけではなく、ブランド価値や付加価値で勝負できる余地があるのが、大市場の魅力。
例:Appleが価格よりもブランド体験で勝負しているのも、大市場だからこそ可能。
『新規サービスや派生ビジネスを生み出しやすい』
市場が大きければ、本業から派生する新規事業(関連サービス)も生まれやすく、ビジネスモデルの多角化がしやすくなります。
例:動画配信市場 → 配信だけでなく、グッズ販売・イベント運営・制作支援などにも展開。
※補足:市場が大きい=成功しやすい とは限らない
市場が大きいことはチャンスではありますが、競合も多いため、「どう差別化するか」「どこを狙うか」の戦略が重要です。
『まとめ』
- 成長余地が大きい売上・ユーザーを拡大しやすい
- 投資家から注目される資金調達や提携の可能性が広がる
- 顧客ニーズが多様独自のポジショニングが取りやすい
- 安定的な事業運営が可能長期的なビジネス継続性が見込める
- ブランド戦略を取りやすい価格競争から脱却しやすい
- 派生ビジネスを展開しやすい関連事業への展開がしやすい
市場規模を基にした戦略づくりのフレームワーク
TAM・SAM・SOMフレームワーク
- TAM(Total Addressable Market):理論上の最大市場規模
- SAM(Serviceable Available Market):自社が対応可能な市場
- SOM(Serviceable Obtainable Market):実際にシェアを取れる見込み市場
たとえば「フィットネスアプリを展開する」場合:種類内容例
- TAM世界の健康管理アプリ市場全体1兆円
- SAM日本国内のフィットネスアプリ市場800億円
- SOM実際に狙える20〜40代女性層50億円
このように市場を細分化することで、戦略を具体化できます。
市場成長マトリクス(Ansoffのマトリクス)
市場規模と市場成長性をかけ合わせて、自社が取るべき戦略を検討します。
- 市場成長性 / 市場規模小規模市場大規模市場
- 成長市場ニッチ狙い / パイオニア戦略拡大・投資先行型戦略
- 成熟市場撤退も視野に / 自動化・効率化差別化・ブランド戦略
市場規模から導かれる戦略の具体例
市場が小さくても「勝てる」ニッチ戦略
例えば、「手の小さい女性向けPCマウス市場」など、市場規模は小さくてもニーズが明確な市場では、圧倒的な専門性を武器に勝てる可能性があります。
- 【戦略例:特化×ファン化×口コミ拡散】
- 少数精鋭で狙い撃ち、ブランド力を育てる
市場が大きいなら「参入障壁」と「競合対策」がカギ
市場規模が大きいということは競争も激しいということ。新規参入時には、下記の戦略が有効です。
- 差別化ポイントを明確にする(価格・機能・体験など)
- 流通チャネルや広告枠を確保して一気に拡大
- デジタルマーケティングで細かくターゲティング
成長市場なら「スピード優先で先行者利益を取る」
市場規模が右肩上がりで伸びているなら、スピード重視の戦略が重要。
- 初期投資を惜しまない
- MVP(最小限の機能)で早期リリース
- ユーザーの声を取り入れながら改良
市場規模の調査方法
無料で使える公的データ
- 総務省統計局
- 経済産業省「特定サービス産業動態統計」
- 矢野経済研究所、富士経済などのレポート要約
有料レポート・業界紙
- Statista
- 日経MJ、業界誌、信用調査レポート
5-3. SNS・クラウドソーシング・アンケート
自社で市場ニーズや潜在需要を調査したい場合は、SNSアンケートやGoogleフォームで簡易調査するのも有効です。
マーケットシェアとは?その基本定義
市場規模と合わせて、マーケットシェアについても解説します。
マーケットシェア(Market Share)とは、ある企業やブランドが特定の市場全体の中で占める売上(または販売数量)の割合を表したものです。
※下記の計算式でマーケットシェアは計算されます。
===
【計算式の例】
マーケットシェア(%)= 自社の売上 ÷ 市場全体の売上 × 100
例:
自社の年間売上が100億円、市場全体が1,000億円の場合
→ マーケットシェアは 10%
===
【なぜマーケットシェアが重要なのか?】
1. 業界内での自社ポジションが明確になる
マーケットシェアを知ることで、自社が業界の中でどの位置にいるのかを把握できます。
- 上位企業か?
- 成長中か?
- シェアが低下しているのか?
といった判断材料になります。
【競合との差を数値で把握できる】
感覚ではなく、数字ベースで競合との差がどれくらいあるのかを可視化できます。
→ 「あと何%伸ばせば、競合を超えるか」が明確になります。
【ブランド力や信頼性の指標になる】
市場で高いシェアを持つということは、多くのユーザーに選ばれている証拠。消費者やパートナーからの信用度・安心感も高まりやすくなります。
【スケールメリットが働きやすくなる】
シェアが高まると、
- 生産コストの削減(量産効果)
- 仕入れ交渉力の強化
- マーケティング投資の効率化
といったコスト面・販促面での優位性が増していきます。
【マーケットシェアをどう見るべきか?3つの視点】
① 絶対的シェア(トップシェア)
→ 市場での支配力を握っている状態。例えば、シェア30~40%以上あると「業界の顔」となります。
メリット:
- ブランド価値の強化
- 価格主導権を握れる
- 流通の優遇など
② 相対的シェア(競合との比率)
→ 業界1位や2位と比べて、自社がどれくらいの規模感かを測る指標。
マーケティングでは「相対シェア = 自社シェア ÷ 最大手企業のシェア」で表されることがあり、1.0以上なら業界リーダー、1.0未満ならチャレンジャーとされます。
③ 成長率と合わせて見る
→ シェアは大きくなくても、「前年比での伸び」が大きければ将来性ありと判断できます。
ベンチャー企業やスタートアップではこの指標が重視されます。
【マーケットシェアを高めるための戦略例】
- 価格競争(コストリーダーシップ戦略)
- 同じ製品・サービスで低価格を武器にシェアを取る
- 差別化戦略
- 独自の価値(デザイン・品質・機能)で支持を得る
- 地域・業界特化戦略(ニッチ戦略)
- 全体市場でなく、特定セグメントで高シェアを目指す
- パートナーシップ・販路拡大
- 流通や提携先を拡大して市場の取り込み力を強化
- 広告・SNSマーケティング
認知を広げ、指名買いを増やすことで自然とシェアも伸びる
※注意点:シェア=利益ではない!
高シェアでも赤字になってしまう場合もあります(価格競争が激しい業界など)
単純なシェアだけでなく、利益率やLTV(顧客生涯価値)も合わせて見る必要があります
※マーケットシェアのまとめ
- マーケットシェアは“現在位置”と“成長性”を測る羅針盤
- 指標意味活用ポイント
- マーケットシェア市場における自社の売上比率業界内ポジションの把握
- 相対シェア自社 vs 最大手の比率リーダー or チャレンジャー判断
- 成長率 + シェア今後の伸びしろ投資判断、戦略策定
全体まとめ|市場規模から戦略の「現実性」と「優先度」を見極めよう
市場規模はただの“数字”ではなく、そこから戦略の現実性・成長性・収益性を導き出すための大事な「地図」です。特に事業立ち上げや商品開発の初期段階では、市場規模の分析を怠ると、「良いモノを作ったのに売れない」という事態に陥るリスクがあります。ぜひ、市場規模の情報を活用して、実現性があり、かつ勝てる戦略を描いてみてください。